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朝日新聞 WEEKLY AERA   
   「魂の歌声高まるゴスペル人気」


メンバーが一体となってリズムを取り、シャウトする。黒人の聖歌が「元気になりたい時代」のブームになった。

黒人特有のリズム感と、叫ぶような歌い方で知られるゴスペルソングの人気が高まっている。
ここ数年、各地の音楽教室では、相次いで"ゴスペルコース"が増設され、マスメディアに乗らないグループのコンサートやワークショップでも満員の盛況ぶり。NHK文化センターも昨年夏からこれまでに、首都圏五カ所で"ゴスペルクラス"を開設した。
ジャズやシャンソンのコーラス、オペラなど音楽教室の多様化は進んでいるが、「ゴスペルの場合、私たちから持ちかけるというより、音楽教室の先生や、若いOLらの要望でクラスを設けることの方が多かった」
と、ヤマハ立音楽振興会教育部の田中優さんは従来とは違うプームの広がりを感じるという。

なんだかゾクゾクする

98年10月、東京・新宿の都庁広場で昼休みに行われた都主催のゴスペルコンサートにも、そんゴスペルファンが詰めかけた。
出演は、在日ゴスペルシンガーのラニー・ラッカーさん、アレックス・イーズリーさんの二人と、ラッカーさんが音楽監督を務める調布南キリスト教会(東京・調布市)の日本人ゴスペル隊「プライト・ライツ・クワイア」。無料開放の客席には約200人分のパイプいすしか用意されていなかったが、延べ2000人が会場を埋めた。
観客の中には、「米国の黒人教会で聴いて以来、大ファン」という女子学生や、「なんだかゾクゾクするわ」と話す中年の主婦らに交じって、「とにかく凄い! 偶然通りかかったんだが、最後まで聴いちゃったよ」という年配のサラリーマンもいた。


ノリノリで歌い踊るイーズリーさん(中央)のソロに応えて合唱する
ラッカーさんとブライト・ライツ・クワイア。パワフルで、底抜けに明るい
/都庁広場Gallery 石川重弘




ゴスペルは、奴緑として米国に渡った黒人が19世紀中頃、キリスト教の賛美歌などの影響を受けて歌い始めた黒人霊歌が始まり。今世紀に入って、パブテスト教会の信徒演奏者らによって現代的な形に発展し、黒人大衆音楽として広まった。マヘリア・ジャクソン、アレサ・フランクリンら世界的なゴスペルシンガーも誕生。日本では、80年代の黒人音楽ブームに乗って上陸したミュージカル『Mama,Iwant to sing』や、人気女優ウーピー・ゴールドバーグ主演の映画『天使にラブ・ソングを』 の二部作などで人気が高まった。
最近ではR&Bやラップなどの現代音楽の要素を盛り込んだ"ヒップ・ホップ・ゴスペル"と呼ばれる新スタイルの楽曲に人気が集まっている。

ハモりながら自己主張

ゴスペルの魅力は、牧師と礼拝者が独唱と合唱の呼応形式で歌い踊る独特のスタイルにある。
プライト・ライツ・クワイアのメンバーも「学生時代のロックバンドでは味わえなかった一体感がたまらない。鳥肌が立つこともある」「聖書からの歌詞が多いせいか、歌っていると心が洗われ、元気になる」などという。
パークリー音楽学院(米国・ボストン)ゴスペルクラス出身の歌手、有坂美香さんは、在学中だった97年、同夜の来日メンバーに抜擢され、大阪ブルーノートなど国内3カ所で2週間余公演した。
「聖書からの英語の歌詞が日本人に伝わるか最初は不安でしたが、結局、心で感じたものがすべてなんだと実感しました」
と追加公演までこなしたツアーを振り返る。
ゴスペルグループ"ザ・ヴオイス・オブ・ジャパン"の主宰者でゴスペル歌手養成学枚学長を務める亀渕友香さんも、
「ゴスペルは、困難を克服して生きようというカが湧き、楽しく元気になれる歌です。自由になりたい、満たされたいという人間に共通の気持ちをハモりながら自己主張できるのが魅力なのでしょう」
パブテスト信者であるラッカーさんは、
「ファッションとしてではなく、聖歌として賛美して歌って欲しいですね」
と高まるブームにちょっぴり不満も口にするが、「無宗教」と言われる日本人は、時代の不安やストレスを発散する手段としてのゴスペルに、はまってしまったのかもしれない。



文化ジャーナリスト 原納暢子
朝日新聞 JANUARY 11,1999

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